三角関係を描く
今回の企画展は、夢二が晩年に渡航した米国と欧州での作品を多く鑑賞することが出来ます。チラシにも使われている「うぐいすや(伯林客中)」は、ベルリンに滞在中にドイツ人をモデルにしたと言われている作品で最晩年のものです。
夢二といえば、女性遍歴が話題になります。この日配布された画集に掲載された中右瑛によれば、岸タマキ、長谷川タカ(お島さん)、笠井彦乃、佐々木兼代(お葉)の4人とは関係を持ったとされており、他にも「小悪魔的な」山田順子とのスキャンダルや失意の後に逃避行した米国でのナズモ(これはプラトニックに終わったようですが)など時代と言えば時代ですが、夢二がいかに魅力的であったかを想像するに難くありません。
小生にとっての夢二の魅力は、多くの女性と関係を持ったということだけではありません。展示作品「港屋絵草紙店」に表れているように、本妻であったタマキ(離婚後も2人の子どもをもうけている)と彦乃と夢二が同じ構図に収まり、三角関係の三人を描くという明け透けな性格に、芸術性を超えた人間の性を強く感じます。
芸術に大衆性が帯びるつまり量産される芸術の時代の幕開けである大正期を代表する夢二の作品をご覧頂きたいと思います。