石原まさたかの痛快!風雲日記(2.0)

使い方は追々考えます(笑)

手に入れちゃいました

クイズでもありませんが、猶太人、希臘、波蘭、波斯、芬蘭土耳古、莫斯科 の漢字表記は何を意味するでしょうか?

明治期文語文をご存知の方はお解りになると思いますが、ユダヤギリシャポーランドペルシャフィンランド、トルコ、モスクワ です。

突然失礼をしましたが、戦前戦中、陸軍大学校校長、関東軍総参謀長を歴任した秦彦三郎(敬称略)が著した『隣邦ロシア』(1937)を入手し、読み始めましたら、以上のようなユーラシア大陸の地域や国などの漢字表記が頻繁に出てきましたので、その一部をご紹介しました。

「1937年(昭和12年)の著作をなぜ今頃?」と思われる方がおみえになるかもしれませんが、この本の作者である秦彦三郎が菰野町出身であることを偶然知り得まして、その思いの端を知ることが出来ないかと思い入手し、拝読しました(インターネットを介して自宅に居ながら、古書として4,000円で入手することができ、現代社会の便利さを痛感しました)。

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第二次世界大戦前夜のロシアを含む極東情勢を分析し、情報共有するために書かれた本であり、当時のロシアの政治、経済、文化などが詳細に報告されています。
ムッソリーニヒトラーが政局の第一線に乗り出してアジテートしているのとは対照的に、当時のスターリンの独裁政治の権力掌握のあり方を政府と共産党の二心同体関係と述べ、したたかにロシアの政治体制を確立しようとしていることを見抜いています。また、当時の対異種民族政策に関しても、イギリスが取った植民主義、旧ロシアやドイツが取った異民族の同化主義、そして、異民族の自治を認め、独立の手助けをする政策などが類型化され論じられており、当時の陸軍幹部の中にも、単に自国の領土拡大すればいいという無節操な考え方ではなく、その後の統治の問題に関心を払う必要性に気付いている人材がいたことを認識することが出来ました。

違った観点ではありますが、「変わった税金」として「消費税」が取り上げられ、当時のロシアの国庫収入の約8割を占めたこともさることながら、当時から「消費税」という言葉そのものが存在したことにも驚きを禁じえませんでした。

結びには、統制経済に対して資源を含む自然環境条件のみからの議論に疑問を呈するとともに、ロシアが企図する可能性がある経済戦争に関する言及は卓見でした。周辺諸国に安価な良品を輸出し(このことをダンピングという言葉で表現していることにも驚きました)、輸出先の国内経済を破壊し、大恐慌を引き起こさせて、国力を剥奪することを経済戦争と名付けて警戒していることは、TPP(環太平洋経済連携協定)の問題を抱える現代日本にも通用する見方だと思います。

さらに続けて、「支那に於ける日本の市場を荒さんが為に支那に対したダンピングを行ったと仮定したならば、日本は如何にして之に対抗するか、私はもとより経済に関する知識はない。無いだけに一層心配で堪らない。軍備の充実により戦争の惨を回避すると同時に、予期せらるるこの経済戦争に対する対策を講ずることも亦刻下の急務ではなかろうか、切に専門家のご研究をお願いして筆を擱く。」(一部、表記を修正しました)と当時の日本が、極東地域あるいは国際的に生き残るために国家として取り組むべき課題を予言的に触れていることは、秦彦三郎の外交的視座の広さを意味していると言えるでしょう。

ともあれ、80年の時空を超えて、菰野町出身の方の著作に触れることができたことは、至福の時でした。