石原まさたかの痛快!風雲日記(2.0)

使い方は追々考えます(笑)

クリミア危機における日本の国益とは?

クリミア危機(もしくは編入騒動)が、日本のマスコミでも連日取り上げられています。平成26年3月28日現在では、ウクライナ政府、米国、EU諸国及び日本などはクリミア自治共和国のロシアへの編入を認めていませんので、日本国内の報道もロシアに対して厳しい論調で伝えていますが、中には 米国のダブルススタンダードを指摘 する論(『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』の著者である川口マーン惠美)や 編入後のウクライナ統治によるロシアのリスクに言及 する論(『「Gゼロ」後の世界-主導国なき時代の勝者はだれか-』の著者であるイアン・ブレマー)も存在し、改めて国際社会及び外交上の各国の立ち位置や歴史の広がりの面白さに興味を惹かれます。

川口マーン惠美さんは、米国のグローバルスタンダードは恣意的なものであり、米国はロシアを一方的に非難する立場にないことを指摘していますし、イアン・ブレマーさんは、冷戦後の米国覇権主義が崩壊し、もはや米国は「世界の警察」足りえず、併せてロシアと中国に拒否権のある国連も機能しない現実を直視するように促しています。
両者に共通して言えることは、パスク・アメリカーナは終焉し、米国の威信が地に落ちたことが今回のクリミア危機を沈静化出来ないことに繋がっていると指摘していると言えるでしょう。この指摘は、当然のことながら、日米同盟を外交防衛の基本基軸としてしている日本にとっては重要な意味を持つことを認識しなければならないと思います。

以前、本ブログにてエジプトにおける政変を取り上げ ましたが、今回のウクライナの問題は、隣国ロシアと同盟国米国及び欧州の対立という、より直接的な意味で日本の外交防衛問題に影響を及ぼすことは間違いありません。今回の件に関して、「日本の取るべき道はどうなのか?」と問われれば、米国に対しては、尖閣諸島竹島の問題含めて対中、対韓あるいは沖縄の在日米軍の問題などにおいて、一方、ロシアに対しては、これまた領土問題である北方領土の問題や対中問題などにおいて、それぞれ国益にかなうのであればある一定の理解を示すことはやぶさかではありません。

小生としては、今回のクリミア危機に関しては、米国に気を遣いながらも、ロシアに軸足をおいた対応をすることが国益にかなうと考えています。理由は簡単です。安倍首相にとって、オバマ大統領よりもプーチン大統領の方が良好な関係を築いているからです。確かに、個人的な好き嫌いの関係で国家の命運を決めることは戒めるべき行為ですが、オバマ大統領はあまりにもビジネスライク的ですし、エジプトやシリアへの対応も国内世論に配慮をし過ぎるあまりに決断の時期や方法を誤ってしまい、パスク・アメリカーナの終焉を現実のものとするかの如く結果的に米国の相対的地位を低下させることになり、米国のリーダーとしては相応しいとは言いがたい状況に陥っているからです。

ただ、日本の現状からすると、日米安保条約が外交防衛を結んでいる米国と基本的な平和友好条約すら締結していないロシアと同じ地平で問題を語れる訳ではありません。その辺のさじ加減はまさに外交の妙ともいえる肝の部分ですし、米国、ロシア、中国、欧州のパワーポリティクスのバランスが崩れつつある中、欧米や日本国内のメディアの「ロシア悪玉説」に惑わされることなく、ワールドワイドな視座での対応が望まれます。