石原まさたかの痛快!風雲日記(2.0)

使い方は追々考えます(笑)

出荷制限と摂取制限のダブルスタンダードが招く混乱

26日(月)の12:00から 総合地球環境学研究所 教授の嘉田良平 さんによる「高まる食のリスクとわが国の食料安全保障」と題した講演会を聴講しました。

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地球規模の課題としては、
穀物価格の高騰
・人口増加による食料不足
・食の安全安心の確保
国内の課題としては、
・新型ウィルスの増加(口蹄疫鳥インフルエンザなど)
・安全基準とリスクコミュニケーション(消費者の過剰反応「ゼロリスク症候群」)
・里地里山の崩壊(耕作放棄地及び鳥獣被害)
などを主な問題意識として話が進められました。

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地球規模の課題について、穀物価格の高騰に関しては、地球温暖化の影響、バイオ燃料への転換、生態系リスクの拡大を原因と分析されており、特に、アメリカ合衆国の大豆の20%から30%がバイオ燃料の原料となっていることを強調されていました。
人口増加による食料不足に関しては、世界の総人口が70億人を突破した現在、栄養失調人口が10.5億人存在することを示した上で、分配や利用のあり方を再考するべきであると発言されていました。つまり、保管状態が悪く食べる前に廃棄となる食料を減らしたり、先ほどのバイオ燃料に見られるように、食料として利用せずに、エネルギーや家畜飼料として活用されるものを見直す必要があるということでした。
食の安全安心の確保に関しては、国内の課題と同様に、新型ウィルスや化学物質による食料汚染への対応を確実に実施し、自然災害や人為的なテロへも対処しなければならないと指摘されていました。
国内の課題について、新型ウィルスの増加に関しては、先ほど触れたことに加えて、特にアジアでの動物感染症経済被害がここ数年増大の一途を辿っていることに着目し、中国や韓国など近隣諸国との情報共有を着実に実施しなければならないと述べられていました。
安全基準とリスクコミュニケーションに関しては、消費者自身が食料についての知識を学ぶ必要性とともに、放射性セシウムの基準値の国際比較を提示され、無闇に国内基準を厳しくしたところで食料の60%~70%を輸入に頼っている日本の「食卓」が安全安心な食料を確保できる訳ではないことを理解しなければならないことを強調されていました。
里地里山の崩壊に関しては、「誰が担い手となるのか?」及び「誰がコストを負担するのか?」という問題を克服する視点が重要であると仰っていました。

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全体的には、食べ物で溢れている日本の日常生活に潜む危険についてお話を頂きました。
首長の視点から興味深く感じた点は、以下の2点でした。
一つは、食料品の出荷制限と摂取制限の関係で、原子力発電所の事故による放射能の拡散によって生産者や消費者を含む現場を混乱させた原因は、当時の菅首相が出荷制限に加えて摂取制限を指示したことというものでした。つまり、せっかく安全な基準を設けて出荷制限を実施しているにも関わらず、流通している食料に対して摂取制限を加えることが、出荷制限の信頼性そのものを揺るがしてしまったことです。
もう一つは、危機管理対応の早期発見、早期対策の徹底を図ることです。これは当たり前のことのようですが、組織が大きくなればなるほど情報伝達及び情報共有に綻びが生じ、結果的に対応が後手後手に回ってしまいます。頭では理解出来てもそれを万事遺漏なく実行していくことは、至難の業ではありますが、可能な限り取組んでいかなければならないと再認識致しました。

他にも地域コミュニティの維持やリスクコミュニケーションの視点からも興味深い提言が多々ありました。貴重な講演を拝聴させて頂きありがとうございました。