石原まさたかの痛快!風雲日記(2.0)

使い方は追々考えます(笑)

Independence from Utility !

ニュートンプレス代表取締役である髙森圭介さんから 「ニュートン 2016年12月号」 をご恵贈賜りました。

今月の特集は、重力波文革命」大隅良典博士がノーベル賞! オートファジーとは?」 の2本立てです。
アルバート・アインシュタイン重力波の存在を予言してから100年となる節目の本年(2016年)2月に、フロリダ大学のディビッド・ライツィ博士が、重力波望遠鏡「LIGO(ライゴ)」によって、史上初めて重力波の検出に成功したことを発表しました。これまでの天文観測は、光(電磁波)によって行われていましたが、例えば、「超新星爆発」(=恒星の大爆発)は、その恒星の外層に阻まれて、内部の様子を光(電磁波)では測定出来ずに、自ずと限界がありました。それに対して、重力波は、あらゆる物体をすり抜けて来るという特徴を有していることから、電磁波で観測していた宇宙とはまた異なる宇宙を観測することが可能になると考えられており、これから我々の宇宙観を大きく変えると言われています。

このことは、以前にも指摘しましたが、科学の分野においては、理論的に予言されている現象を証明する手続きが重要であり、観測技術が大きな意味を持つことになるということです。このことは、実は、我々の日常生活にも大きな意味を持つことは言うまでもありません。特殊な例で申し訳ありませんが、DNA鑑定技術の向上が犯罪の立証に寄与していること(DNA鑑定初期の技術の瑕疵は指摘されていますが)は間違いないことからも、過去においては観測不能であったものが、観測可能になることの価値観の違いは理解して頂けると思います。

重力波は、物体が動くと常に発生すると考えられていますが、ボールを投げたり、モノを落としたりなどで生じる重力波は、あまりに小さすぎて、検出することができません。重力波の観測については、全く起こりえないこととして、木星付近でブラックホール同士が衝突したとしても、地球と太陽の距離が水素原子1個分ほどゆがむ程度だということです。この実例を体感することは不可能ですが、イメージとしてはまさに天文学的スケールの話であることには間違いありません。

重力波による宇宙観測は緒に就いたばかりですので、今後の研究に期待しますが、この重力波を検出した重力波望遠鏡「LIGO(ライゴ)」は、建設及び改良費用が6億ドルを超すプロジェクトです。1ドル=100円としても600億円です。ただ、これを菰野町の一般会計予算の約4年分と置き換えて、有益だとか、無駄だとかを論じるのは間違っていると思います。なぜなら、それは、毎年の支出が見込まれるランニングコストと必要な施設を建設するためのイニシャルコストを同列で語るぐらいの意味をなさないからです。

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今月10月3日にノーベル医学・物理学賞を受賞することになった大隅良典さん(東京工業大学特任教授)は、受賞決定後に「科学が『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている。本当に役立つのは100年後かもしれない。将来を見据え、科学を一つの文化として認めてくれる社会を願っている」と発言したことで注目を浴びました。これは、「役に立つ」と思われえている応用研究が優遇され、すぐには「役には立たない」と思われている基礎研究が軽視されることに関する発言でした。一部には、「科学が『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている」の部分だけを都合よく取り上げて、別の印象を与える議論も散見されますが、前後の発言も合わせて読めば理解出来ると思います。

「オートファジー」については、既にマスコミ報道で取り上げられていますので、ここで小生が何かを申し上げるまでもありませんが、細胞内の不要になった「ゴミ」を細胞内で作られてた特殊な膜で取り囲み、細胞の機能を健全に保つ役割を果たしています。当然のことながら、このオートファジー機能に支障が出れば、病気になり、例えば、パーキンソン病の発症などにもこのメカニズムの不全が関わっていると仮定されています。こちらも今後の医学に大きな影響を与えると思われますので、研究の発展に期待します。