中国の経済成長の鈍化
ご専門が中国経済ということで、2000年以降の経済状況を4つの時期に分けて分析され、それぞれの知見をお示しになりました。
・2000年~2009年:中国の高度経済成長期
2億人が内地の農村部から工業地帯である沿岸部に移動
増加した貯蓄が投資に振り向けられる
賃金上昇を生産性向上で吸収できず、潜在成長率の低下
・2009年~2013年:投資ブームの後遺症が顕著になる時期
「4兆元」投資と大規模な金融緩和による空前の投資ブーム
投資ブームの反動(過剰設備、過剰債務、不動産暴騰及び物価上昇、借換による資金循環の悪化)
金利の上昇とシャドーバンキングの急増
・現在~2017年:今後の中期見通し
生産性や付加価値の向上が出来なければ「中所得国の罠」の陥弄
賃金上昇による実質経済成長の維持困難
内なる既得権益による経済活動の硬直化
・2020年以降:少子高齢社会の到来
全体的な印象としては、限定的な日中関係に影響されることなく、極めて冷静かつ抑制的な見解を述べられており、すべてに賛同という訳ではありませんが、大変参考になる話でした。結論的には、中国がGDPで米国を抜くことはないものの、短期での中国経済崩壊もないが、年金基金の積み立て(公的年金制度がない)や不良債権処理(投資ブームによるバランスシートの不均衡の解消が必須)、農民工差別の撤廃(農民の市民化)など、社会保障や社会システムの構築のために財政出動が必要になり、国家財政が立ち行かなくなる可能性が大きい。
最後に、「中国を単一人格で擬人化してはいけない」という指摘もなさり、当然のことながら、中国国内でも権力闘争や世代間闘争があるため、中国の見解を単純化してはいけないということでした。
今後の東アジアを考える際の有意義な時間となりました。
先のブログ で大日本市の話題に触れましたが、中川淳さんから手土産を頂きました。昨年は、富士山の傘でしたが、