石原まさたかの痛快!風雲日記(2.0)

使い方は追々考えます(笑)

撃ち方待ての弾は伸びる

数年前に政治資金規正法の絡みで、某大物政治家が、『ゴルゴ13』で国際情勢や外交防衛などを学んでいるのではないかとの冗談めいた話があった。情報収集の手段は、人それぞれのリテラシーの問題と密接に関連することであり、加えて、政治のみならず社会的活動は、その収集した情報の活かし方つまり結果が重要であるので、学術書であろうと、コミックであろうと大きな問題ではないと思う(小生は『ゴルゴ13』を矜持の問題として、税金では買わないが(笑))。

斯く言う小生も某大物政治家と同じく『ゴルゴ13』のコミック本を第1巻から全て所有している。先日、発売されてしばらく経ってからではあったが、最新号の第185巻(天空の毒牙)を手に取った。

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本号は3話が収録されており、その2話目の「史上初の狙撃者 ザ・ファースト・スナイパー」(脚本協力:井沢元彦)を読み始めると、「日本国、近江・伊勢国境の千草峠。元亀元年(1570)五月・・・」とあり、就寝前の眠気が一気に飛んだ。千草峠と元亀元年とくれば、織田信長杉谷善住坊に狙撃された話しか無いからである。善住坊は、諸説はあるものの菰野町に住んでいたことがあり、菰野町には杉谷という集落もある。

小生の愛読する『ゴルゴ13』に、善住坊が史上初の狙撃者(この史上初は、日本史上初という意味だと思うが)として取り上げられていることに興奮を禁じ得なかった。もちろんこの狙撃が失敗したからこそ、信長がその後、上洛を果たすことができた訳であるし、失敗したとは言え、その信長を狙撃したことにより善住坊の名が史上初のスナイパーとして歴史に記憶されたことは、逆説的である。つまり、狙撃が成功していて、違う武将が天下を取っていれば、善住坊の名は忘れ去られていた可能性が高い。

この話では、狙撃の名手であった善住坊が失敗した原因を、ゴルゴ13、いやデューク東郷(笑)が、引き受けた狙撃依頼を通して検証するストーリーになっている。『信長公記』では、信長の天命を褒め称えるために、善住坊が2発とも弾を外したことは信長の強運に起因しているとしていた(と思う)が、本著では、「撃ち方待ての弾は伸びる」という旧日本陸軍の言葉をキーワードとして、狙撃失敗の原因を説明している(これだけの歴史的逸話と軍事的知識を一気に習得出来るのは、学術書にも勝るとも劣らないと思う)。

脚本協力に『逆説の日本史』などで有名な井沢元彦の名があり、少し調べてみた。なるほど、井沢元彦(1987)『修道士の首 織田信長推理帳』(講談社文庫)に収録されている「二つ玉の男」が、善住坊の信長狙撃を描いていた(早速、古書を入手した)。

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井沢元彦の「二つ玉の男」と「史上初の狙撃者」は、ストーリーも結末も異なるが、地元の人物の善住坊を複眼的に考える良い機会となった。蛇足だが、『ゴルゴ13』のマニアの間では、ここ数年、ラブシーンが皆無となり、男性としての機能低下が指摘されていたが、この話では久々にラブシーンがあった。本シリーズ500話を記念して、さいとうたかをが気を利かしたのだろうか。もちろんそれを確かめるべき手段はない(笑)