琳派・若冲と雅の世界展
上記の写真にあるように、伊藤若冲の最初期の作品である 「雪中雄鶏図」 の色鮮やかさ、鶏の力強さや表情は、素人の小生をもひき付ける技巧を有しています。全く余談ですが、この鶏の表情が、どうも笑っているというか、半笑いで餌を探しているのを楽しんでいるように見えてしまうのは、小生だけでしょうか?
隣の金魚が描かれた作品は、これまた琳派では有名な神坂雪佳の「金魚玉図」です。金魚玉はガラス製の金魚鉢(ガラス製の金魚鉢が江戸時代中期以降に流行していたことも驚きですが)のことで、その中に浮かぶ曲面で歪んだ金魚を描いた愛らしい作品です。小生から見ますと、これは金魚が上段に浮かんでいるような構図が絶妙と感じますし、表装の葦簀が涼やかさを一層増しています。この金魚玉図は、8月4日(日)までの前期展示のみですので、お見逃しなく。
最も圧巻であったのが、「桐竹鳳凰図屏風」や「桐鳳凰蒔絵長持」などの一連の作品でした。桃山時代から江戸前期にかけて特に好まれたと言われている金地に桐と鳳凰を描く屏風図は、為政者の権勢を誇示する象徴的なものでもあります。雌雄の鳳凰の姿勢がなかなか味わい深いと感じました。
蒔絵につきましては、日本独特の技法であり、現在もスマートホンやケータイ電話などに装飾を施す原点とも言えます。
若冲が最も描いたと言われている対象物は鶏で、そのバリエーションが堪能出来るのが、「鶏図押絵貼屏風」です。12の鶏が独立して描かれており、今にも動き出しそうな躍動感のある鶏や鶏独特のリズムが伝わってくるような作品でした。
今回は、古香庵こと初代細見良(1901-1979)のコレクションよりも二代細見實(1922-2007)のコレクションが多く展示されていました。この親子には、面白いエピソードがあり、初代は、平安時代の仏画や仏像、和鏡などに高い関心を示し、さらには室町時代の芦屋釜にも傾倒していました。しかし、二代目は、桃山時代から江戸時代の絵画に価値を見出し、両者のコレクションをめぐっての確執は関係者では有名な話となっているようです。
京都まで行かずとも、このような価値ある展示会を鑑賞出来ることは、大変価値のあることだと思います。皆さんにはぜひご覧頂きたいと思います。