石原まさたかの痛快!風雲日記(2.0)

使い方は追々考えます(笑)

尊厳という秤

知人と言いますか、およそ2年4ヶ月前の 第27回菰野町社会福祉大会 の講師を務めて戴いた東近江市永源寺診療所の所長で医師の花戸貴司さんから、自著である 『最期も笑顔で 在宅看取りの医師が伝える幸せな人生のいまい方』(2018)朝日新聞出版、をご恵贈賜りました。

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本書は、朝日新聞の滋賀版に花戸さんが約2年間にわたり連載した「永源寺日記」を一冊の本にまとめたものです。小生も花戸さんがSNSで情報発信をされている記事を時たま目にしていましたので、いくつかのエピソードは知っていましたが、改めてまとまって拝読すると、そこには、日本の地域医療と言いますか、地域の近未来の羅針盤が示されていると確信しました。

「ご飯が食べられなくなったらどうしますか」

これは、花戸さんが、患者が元気な間に必ず問いであり、これは延命治療(例えば、鼻から管を通して人工的に栄養を供給する「経管栄養」など)に関わる大きな問題と関わるものです。

診療所のある永源寺地域での在宅看取りの割合は、約50%であり、全国平均の18%に比べて圧倒的に高い数字です(PP214)。これは、当たり前ですが、住み慣れた自宅で、家族や地域の皆さんに見守られながら人生を最期を迎える割合が多いということです。それが実現出来ていることの一つに、花戸さんが「ここでしかできないことはなにか」(PP30)と常に自分を問い直しながら、医師として、人として、みずからの役割を全力で果たしていることだと感じます(花戸さんも強調されていますが、これは花戸さん一人だけで可能になる訳ではなく、患者とその家族、地域の人々、看護師、介護士などの協力がなければ成立しません)。

ここで取り上げられた皆さん一人ひとりにそれぞれの生き様があります。その一つ一つと丁寧に向き合い、医師とは言え、生身の人間として、ギリギリの判断を繰り返している花戸さんに感服しました。その姿勢は、倫理と医療を尊厳という秤でバランスをとる作業にも見えます。

平成30年度は、日本の医療と介護にとって重要なスタートの年となります。地域医療や介護に関わる人にとって、最も重要な患者自身がどう考えるのかという当たり前の視点を深める良書だと思います。